可惜夜ってきっとこういう夜のこと

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Lyrics:Stardust, revel, 이장준, TAG

Composed / Arranged:Stardust

 

Make Me Loveが本当に好き。

自分が好きなフューチャーベースの楽曲だから、というのがおおよその理由ではあるけど、MMLは歌詞も好き。だからその話をする。

 

 

告白ソング?

公式でのMMLの説明は下記のようなもの

チャンジュンとTAGのときめきに満ちた告白ソング。

"청량X섹시를 뒤집어놓으셨다" 골든차일드, 'ONE'에 담은 피땀눈물..다 갖춰진 '명품같은 앨범'(종합)[V라이브]

「Make Me Love」は耳を虜にするリードサウンドが魅力的なフューチャーベースのPOP-DANCEジャンルの曲で、愛する女性に対する手の施しようのない思いを表現した告白ソング。 チャンジュンとTAGのラップが加わり、迫力あるロマンチックな曲の雰囲気を極大化させる。

https://namu.wiki/w/Take%20A%20Leap#s-5.5

サウンド重視で音楽を聴いているので記事が出た当初は「ふ~ん、そんな曲なんだ」程度にしか思わず、歌詞に注目することなく聴いていました。だけど歌詞の内容を知って以降、この公式の説明に違和感を持つようになった。というのも歌詞全体の雰囲気がどこか憂いを帯びていて、世間一般がいう告白ソングの枠から外れているように映るからだ。

 

確かに、歌詞のほとんどは甘くそして力強い誓いの言葉で組み立てられている。冒頭のチャンジュンパートはベタすぎて、私の好きなレビューサイトで馬鹿ウケしてた(面白可哀想) でもそんな言葉の合間合間に後ろ向きな言葉がある。※ラッパーラインは後で言及するので、ここでは他メンバーの部分をピックアップする。

이 순간이 마지막이 된다 해도

네 손끝이 단 한 순간뿐 이래도

この瞬間が最後になっても 君の指先がほんの一瞬だけでも

이 순간이 다 꿈이라고 말해도

네 손끝이 다 거짓말이라 해도

この瞬間が全て夢だとしても 君の指先が全部嘘だとしても

운명이 아니라 해도

運命じゃなくても

こういった歌詞がある曲を”ときめきに満ちた告白ソング”と言っていいのだろうか?と感じる。

 

余談だけど、陰影を感じさせる歌詞を入れてくるところすごくウリムっぽい。純度100%のハッピーにしてくれない感じ。

 

 

What the basis of happiness?

公式の説明からわかる通り、この曲はラッパーラインに比重が置かれています。フレーズ数も他の楽曲より多い。そこでじゃんてぐのリリックを深く考えてみる。まずはてぐさん。

What is the basis of happiness?

이 밤은 참으로 아름다워

어떤 사랑도 이보단 안 경이로워

I’m falling in love

어떤 누군가가 널 채갈까 봐

매일 두려워

처음에는 그저 그랬는데

다시 머릴 긁적이게 돼

흔들리는 맘 소리 들리는데

네 목소린 어디도 안 들리네

 

幸せのベースとなるものは何ですか?この夜は本当に美しい これほど素晴らしい愛はない 恋に落ちてる  誰かが君をさらうかもしれないと毎日怖い 最初はただそういう風だったけど また頭を悩ませる 揺れる心の音が聞こえるのに 君の声はどこにも聞こえないね

 

印象的なWhat is the basis of happiness? という入り方。聞き覚えがあるけどなんだっけ…と数日頭を悩ませた。そして正体はこれ。

 

빌었어 (창모) Album 'Boyhood' | Cover | Golden Child TAG

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てぐさんが編曲をしたこの빌었어の冒頭部分。原曲も冒頭部分に台詞があるけど、ここではその冒頭部分は下記のリリックに変更されています。

What is happiness? What is the basis of happiness? Is it something we share with our loved ones? Maybe all of our hard work and dedication paying off in a monetary reward, or the pure thrill from achieving our dreams to become a reality. However, the answer to happiness has always been inside your heart.This song is a present to those listening, made by a boy who constantly dreams for happiness and endlessly craves for more.

幸せとは何ですか?幸せのベースとなるものは何ですか?それは愛する人たちと分かち合うものですか?努力と献身の全ては金銭的な報酬で報われるのかもしれないし、夢を実現する純粋なスリルなのかもしれない。しかし、幸せへの答えは常に心の中にあります。この歌はいつも幸せを夢見る、いつまでもそれ以上のものを欲しがる少年から、聴いているあなたに贈るプレゼントです。

 

原曲のコンセプトを残しつつも「夢」ではなく「幸せ」の定義を問う冒頭が新鮮だった。クレジットに記載がないので、このリリックがてぐさん作詞なのかはわからないけど、MMLでも登場してるからおそらくそうかな?と思ってる。短期間で同じフレーズを使っているあたり、「幸せの定義」はてぐさんの中で今重要なトピックになっているんだろうな、と思う。完全な想像でしかないけど。

 

話が逸れました。このリリックから、幸せ=愛する人たちと分かち合うものという考え方が定義の例としてあげられていることがわかる。

 

次に、ここで初めてMMLは夜を描いた曲であることが直接的にわかります。夜であることを理解した上で前半部分の歌詞を読むと情景がより明確になる。

 

この愛に敵うものはない、と言いつつも昔も今(夜)も変わらず何かしらの不安を抱えている姿が描かれる(ここは前項で触れた後ろ向きな言葉に振り分けることができる)

昔抱えていた不安は所有欲が起因したもの(=関係が浅いときに起きるもの)。では、今抱えている不安は何が起因しているのか。それは自分たちが「幸せの定義」を満たせているか、という疑問からだと思う。

同じ夜を過ごしているのに相手の声は聞こえず自分の心の音ばかり聞こえてしまう状況に対して、「これは利己的で幸せの定義から外れた状況なのではないか?感情を分かち合えていない状況なのではないか?」と。だからこそ、Make me loveと言っているのかなと。

時間の経過と共に自分を俯瞰的にみた上で利他的な不安を持つようになっている主人公の変化から、相手への純粋で真っ直ぐな愛情を感じる。なんというかてぐさんは体温を感じる言葉を書くひとだな、と思う。

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暗闇に包まれた花道とは

次にチャンジュン。

이끌림 속 설렘 그 위 핀

꽃 색깔은 Flame Ya

Inhale Exhale

너로 숨을 내쉬어 난

스물 네 시간도 모자라

온종일 널 품에 안기엔

어둠 거둔 꽃길 위 함께 걸어주길

 

導かれるときめきに咲いた花の色は炎のよう 吸って吐く 君で呼吸をする僕は 24時間でも足りない 1日中君を抱きしめるには 闇に包まれた花道の上を一緒に歩いてくれますように

 

毎回言うけど、じゃんてぐは歌詞もスタイルも差別化されていて最高なわけですが

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골든차일드(Golden Child) 장준&TAG가 말하는 두 래퍼의 차이점은? vol.1 [아뷰뷰] https://www.youtube.com/watch?v=AaLTTuhoQsU&t=543s

今回も例に漏れずてぐさんはリリックに自分の考えを入れ、そしてチャンジュンは曲全体の言表を行なっているようにみえます。

 

チャンジュンのパートは相手に対する率直で熱心な愛情が表れた言葉がほとんど。これは曲中一貫して伝えられた主人公のイメージをそのまま引き継いでいる印象です。しかし最後の部分は少し話が違う。今までの情熱的な感じがスッと消えて、切実な祈りになる。こう聞こえてるの私だけかもしれないけど。でもここ、ほんっっっっっとうに好きなので掘り下げます。

 闇に包まれた花道の上を一緒に歩いてくれますように

そもそも闇に包まれた花道ってなんなんだろうか。始めはこの意味がよくわからなかった。だって花道は花道として存在している時点で闇とは無縁な道だと思ったから。そして世間一般の告白ソングなら「花道の上を一緒に歩いてほしい」とか「二人で花道の上を歩こう」とか言うはず。

ここでチャンジュンにとっての花道を考えてみる。もし、チャンジュンの中で「どんな人生も花道である」という前提があったとしたら。そう考えると闇の表現も腑に落ちるのだ。これまでもこれからも人生に覆い被さる不安があること(てぐさんのリリック参照)は自覚しつつも、自らが進んでいる道は昔も今も、そしてこれからもずっと花道であると。例え足下が見えなくなり、花道かどうか目で確認することができなくなったとしても。理想の押しつけなのは重々承知だけど、チャンジュンはそういう考えを持っていそうな気がしちゃう。

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こういうところ…

この曲に限らず、チャンジュンって詩的な表現をすることが多いような気がします。てぐさんは現実感があって重さを感じるけど、チャンジュンはちょっと読み物みたいで浮遊感があるというか。まじで何者?

 

~したいという誓いや、~してほしいという気持ちを綴ってきたこの曲の最後を飾る言葉が、~してくれますようにという祈りに変わっているのがいい意味で違和感を醸し出してて好き。祈りになったからこそ、逆に切実さが増しているように聞こえる。これ意図的だったらどうしよう…………ジャンスターさん………

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思い浮かべる光景

歌詞を読んだときパッと思い浮かんだのはCall me by your nameのキスシーンだった。このシーンは夜ではないけれど、この世の誰よりも、何よりも二人は眩しくて綺麗で無敵なのに、心の片隅で悲しい未来をみている風なのがどこか似ているように思った。多分夏なのも影響しているけど。

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映画 Call me by your name

眩しさと儚さって表裏一体の関係なんだろうね。

 

 

私が思うMML

記事タイトルにしたように、MMLは可惜夜*1そのものを表した曲だと思う。

今(夜)が素晴らしいと感じるからこそ、終わってほしくないと感じるからこそ、誓いを立て、不安を感じ、未来を祈る。どんな歌?と聞かれたら、私はきっと決意の歌だよって答える。

 

 

おまけ

www.vlive.tv

アイドルラジオの最後、ジュチャンがなんとな~~~くゆる~~~く踊っているのを見て軽率に期待してしまったので、いつかやってください!!!!!(馬鹿デカ声)

 

そんなわけで年間再生回数1位を記録しそうなMake Me Loveの話はこれでおわり。

 

*1:可惜夜:明けるのが惜しい、すばらしい夜。

可惜夜(あたらよ)とは何? Weblio辞書