Singing In The Rainをみて

 

感想文

 

[M/V] 골든차일드(Golden Child) - Singing In The Rain (JooChan & BoMin)

www.youtube.com

 

Singing In The RainのMV、すごくない?!?!という話をしたいがためにパソコンを開きました。

 

というのも、このMVは関係性をどう捉えるかで印象が大きく変わる広義的な作品になっているからです。

 

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「結末が印象的、シックスセンス並みの大どんでん返し」という社内評があったということ、この社内評をウリムが公開したという事実を信じて書くからね?!?!??!?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

制作前の様子から元々ジュチャン監督が想定していたストーリーラインが女の子を巡る三角関係であったことがうかがえます。実際、その関係性に基づいてMVを観ることができます。ですが、ボミンちゃんに注目すると違う解釈の可能性が生まれます。

 

ボミンの視線に注目した場合、読み取れる3人の関係性は仲の良い友人でありながらも、ジュチャンを巡る三角関係になる。そう感じた理由を各シーンから拾っていきたいと思う。

 

MVは大きく分けて

①3人が一緒に過ごすシーン

②雨の中、ジュチャンとボミンそれぞれが傘を差しているシーン

③ジュチャンとボミンが傘を差さず雨に打たれるシーン

の3つに分けられます。

 

①3人が一緒に過ごすシーン

3人の立ち位置は基本的にジュチャンとボミンが女の子を挟む形になっていて、さらにジュチャンと女の子同士のスキンシップが多いことから、ジュチャンを羨むボミンという構図にみせています。

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それでも不思議な箇所がいくつかあります。

 

 

0:07/0:15

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ボミンが目覚めてからまず視線を向けたのは誰なのか、そして微笑んだ先は誰なのか。

 

1:50/2:29

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双方が女の子のことが好き、という関係性をMVで表したいのであれば、ボミンと女の子のツーショットがないのは少し不自然。逆に、ボミンとジュチャンのツーショットがあるのは仲の良い友人関係であることを示す要素でもあるけれど、この2人自体の関係性を強調したい理由があるようにも思えます。

 

2:44

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MV全体を通して示されてはいましたが、女の子に対するジュチャンの気持ちが今までで一番クローズドなシチュエーションで表現されます。若干気まずそうな2人の様子からも、甘酸っぱさみたいなものがうかがえます。そしてそれを見たボミンは2人の関係性を受け止めた上で知らないフリをしながらその中に割って入ります。ここは友情を優先したシーンとして描写されています。

しかし、その後のボミンの視線が気になります。まず、女の子に視線が向けられ、次にジュチェンへと移ります。ボミンは怒りでも嫉妬でもない切なげでありながらも優しい表情でジュチャンを見つめ、ジュチャンが背を向けてもなお見つめ続ける。さらに、女の子に向けられた時間よりジュチャンに向けられた時間のほうが長いのも素敵。視線の暖かみという点において、ぼみんちゃんは「愛」と「友情」の違いを表現しているように個人的に感じました。

 

2:57/3:03

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ウリム社員コメントにもあった、どんでん返し。ボミンの視線は誰に向けられているのか。

 

 

②雨の中、ジュチャンとボミンそれぞれが傘を差しているシーン

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傘・スーツ

ボミンは黒色の傘を差しています。一般的に黒は幸福からは離れたイメージを与えます。これに対してジュチャンは赤色の傘を差しています。赤は恋愛感情の表現として使われる代表的な色の一つであり、幸福のイメージを与えます。また、ジュチャンの白いスーツは無垢さを表しているように映ります。(「狂炎ソナタ」のSのような素直さ故の無知の暴力みたいなのが感じられてそういうのが本当によく似合うな~と思う)

 

表情・視線

ボミンは終始カメラとは目を合わせず笑顔をみせることがありません。これに対して、ジュチャンはカメラに目を合わせながら微笑みます。想いを寄せる相手と視線が交わらないボミン、視線が交わるジュチャンということを表しているように思います。

 

 

③ジュチャンとボミンが傘を差さず雨に打たれるシーン

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歌詞を読むと、このシーンは”ジュチャンがボミンの想いを知るシーン”という仮説を立てることができます。

Singing in the rain Rain drop the theme

내가 줄 수 있는 게 노래 밖에는 없지만

Dreaming in the rain 내리는 비처럼 너는

그냥 들어주면 돼 이 노래

雨の中で歌う 雨の雫のことを

僕があげられるのは歌しかないけれど

雨の中で夢をみる 降る雨のように君は

ただ聴いてくれればいい この歌を

더 아름답게 내리는 비와 음악

다 하지 못한 말 조금 어색한 그 말

이렇게라도 말하고 싶어

오늘처럼 비가 내리면 난 너와 함께 있고 싶어

さらに美しく降る雨と音楽

言い切れなかった言葉 少しぎこちないあの言葉

こうやってでも言いたい

今日のように雨が降れば 僕は君と一緒にいたい

歌詞の中で雨は主人公が伝えることができなかったたくさんの感情や言葉の比喩として登場します。MVの状況で言えば、これはボミンの持つ感情であり言葉になります。となると、傘を差さず雨に打たれるシーンは”ジュチャンがボミンの想いを知るシーン”と捉えることができるのではないでしょうか?ボミン側のカットがないことも気になるし。

 

また、このシーンの後カラフルな傘が挟まれたり、最後雨上がりの空に虹が浮かんだりと、告白できたことをささやかに祝福するような演出が入っているように思います。

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最後に、楽曲タイトルであり、MVでも映像が使われていた、映画『雨に唄えば』劇中歌「Would You」について触れさせてください。この楽曲では、女性が恋する男性に向けて街にいる恋人たちと同じように過ごしたい、という旨の願いが語られています。

He holds her in his arms.
Would you? Would you?
He tells her of her charms.
Would you? Would you?
They met as you and I,
And they were only friends.
But before the story ends...

He'll kiss her with a sigh.
Would you? Would you?
And if the girl were I
Would you? Would you?
And would you dare to say,
Let's do the same as they
I Would. Would you?

And would you dare to say,
Let's do the same as they
I Would. Would you?

"Let's do the same as they"は「あの人たちと同じことがしたい」と想いを寄せる相手と恋愛関係になりたい心情を表すフレーズですが、クィアの身にとってはクィアもシスヘトロと同様に普通に過ごしたい恋をしたいというフレーズにも解釈できます。

 

実際カムアウトできないままもどかしい気持ちを抱える生活を強いられたり、シスヘテロクィアの存在を考慮せず無自覚的にストレスを与えたり、ということは日常茶飯事で、"Let's do the same as they"と思うことは常にあります(※当方がアセクシャルのため)。

MVにおけるボミンも同様の苦しみを抱きながら、決心して雨に打たれながら告白をしたのかもしれないと思うとなんかこうすごい…………すごい素敵なんですよね…………だからこそ、最後に雨上がりの虹が写されたのはなんだか救いのように思いました。

 

 

また、MVをみながら、読んだ当時「本当にそうまじでそう」と同意したクィアベイティングに関する記事の中の文章を思い出しました(だいぶ前の記事だけど)

マクブライド氏は、「取り扱われること、それ自体が重要だ。クィアな若者にとって(中略)自分たちのアイデンティティーが舞台や音楽、映画に反映されているのを見ることは、人生を変える出来事というだけでなく、命を救う出来事にもなりえる」と話した。

クィア・ベイティングは搾取か、それとも進歩の表れか - BBCニュース

 

このMVをきっかけに救われた誰かの人生がどこかにあって、その人をこれからずっと生かし続ける歯車になるのかもしれない、そう考えたときやっぱり自分はエンタメの力を信じていたいな、と改めて思いました。

 

明後日のリパッケージ楽しみ!おわり